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TOKY Staff Blog
ショップからのお知らせや日々の新たな発見などの情報を発信します

植物

2022年を振り返りつつ、2023年を考える

2023.01.09

毎年恒例になってきました『振り返りシリーズ』。

 

 

2022年はコロナが鎮静化しだし、ようやく明るい世の中が訪れるか?と期待していた矢先に、ロシアウクライナ紛争や急激な円安、そして原材料の高騰などを受け、園芸店を営んでいる側としては以前の方がよほど盛り上がっていたのではないかなと感じます。

 

それでも毎日お店を開けていればこそ、常にお客様にご来店いただけ、感謝しております。

 

 

植木鉢、園芸用品、植物、日々仕入れて検品して撮影して…を繰り返す毎日で、最近は園芸のトレンドにもなかなか乗れていないのかなという焦りも感じています。

 

 

というわけで、2023年から力を入れてみたい事柄をピックアップしてみました。

 

 

 

加速栽培で播種から2ヶ月でとても大きくなったモンソニア・ペニクリナ

 

<加速栽培>

耳慣れない方も多いと思います、これは文字通り植物の栽培スピードを上げて、早く育てることを意味します。

 

 

この加速栽培の第一人者である、と思われるモリトシロウさんより昨年はモンソニアの種子をいくつか譲って頂き、当方も加速栽培に挑戦しております。

加速栽培を簡単に言えば、LEDライトを強く当て、風も強く当て、そして底面給水で常に水を切らさずに実生を行うことです。

 

 

氏の実生した植物のサイズと期間を見ると信じられない結果となっていますので、是非モリさんのサイトで是非確認してみてください。

 

 

当方も播種から2ヶ月くらいで直径1cmくらいに成長し驚いています。

 

 

これはLEDが必須の栽培方法で、人間の作った栽培用のライトが、用途によっては太陽光を上回る結果になったのではないでしょうか?

 

 

 

普段チタノタを育てる場合、この葉の長さにになるとネギの様に伸ばしてしまう…が、これはうまくいきそうな予感がする。CACTUS GREENさんのアガベ・スーパーチタノタの子株

 

<アガベ・チタノタ栽培への再チャレンジ>

昔からの人気種、アガベ・チタノタ (オテロイ)。

 

 

山取りされてくる野生個体を抜き苗で販売している状況は一向に改善されないことは腹立たしいのですが、その副産物でしょうか。それらを購入した人たちが独自の栽培方法を見つけ出し、野生個体を上回るような素晴らしい樹形にしているのをSNSで見かけます。

 

 

当方は日照時間が少ない、アガベにとってはストレスの多い環境のため、特にチタノタは間延びした状態になることが多く、近年は仕入も栽培も行っておりませんでした。

 

しかしながらチタノタの栽培マニアの方々を見ているうちに自分でも試したくなり、現在実践しております。

 

 

上記で挙げている加速栽培と似たような環境で、これまたLEDで栽培すると間延びすること無く、肉厚で太い鋸歯になることが分かり栽培が俄然楽しくなってきております。

 

 

高性能かつ、ピンク色の光が抑えられるLEDライトの出現で園芸の世界は大きく変わったと思っています。

 

 

 

昨年末にリリースした、同じ常滑で作陶されている大原光一さんにご紹介頂いた鯉江明さんとの出会いも素晴らしい体験となりました

 

<新しい陶芸家さんたちと出会う>

やはり、TOKYと言えば作家さんたちのハンドメイドポットですから、2023年はより力を入れていこうと考えています。

 

長い歴史のある、陶器のギャラリーさんたちと同様に、この作家物の植木鉢の世界も作家さんをいかに確保するか、ということで頭を悩まされる園芸店・鉢屋さんも多いと聞きます。

 

 

私たちは、ハンドメイドポットの専門店としては日本最古の自負もありますし、東京は日本橋の路面に店を構え毎日営業している数少ないブランドです。

陶芸家さんも声がかかる機会が増えてくると思いますが、もし当店が気になったらお気軽にお声がけいただければと思います。

 

 

 

ともすれば、ネットを駆使し、お客様の知識も経験も豊かな状況となっている状況ですので、私たちもそれに負けないように頑張る一年にしたいと思います。

 

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店頭にて販売しているPot + Plantsにつきまして

2022.05.23

 

以前はオンラインショップでも販売していた、陶器鉢に珍奇植物を植えた『Pot + Plants (ポットプランツ)』ですが現在TOKY日本橋実店舗では常時販売しております。

 

 

オンラインでも販売したいのですが、配送事故や配送時の振動による用土の撹拌などもあり、撮影時の状態を保持しにくい懸念から現在は店頭のみの取り扱いとなっています。

 

 

取り扱う植物の多くは国内実生・海外実生の植物が中心ですが、子株などのクローンを栽培し大きくした状態でも販売しています。

 

 

多く流通しているものから希少な品種まで、TOKYならではのチョイスを見て頂ければと思います。

 

 

お客様がご購入し、早々と傷んでしまわないよう、愛情を込めて栽培したもののみを厳選しておりますのでご安心ください。

 

 

店内ではLEDのELIXIAで栽培しておりますので、その状態を見て頂くのも面白いかと思います。

 

 

遠方で、実店舗に来られない方にはご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

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この植物難しいですか?簡単ですか?

2018.09.09

DSC_0964無遮光の露天栽培で夏を過ごすマダガスカル植物と南アフリカ植物たち。

 

 

TOKY東日本橋実店舗に立っているとよく聞かれるご質問。

 

「この植物難しいですか?」「この植物簡単ですか?」

 

これを聞く気持ちはすごく分かります。

 

一般的 (そもそも一般的など存在していないが) に難しいか、簡単か、という基準があった方が購入の動機になるのとなんとなくの安心感を得られるからと思っています。

 

ただ、どの視点、どの立場、どんな環境、などの基準を設けない、もしくは共有せずにこの質問をしてもほとんど意味がありません。

 

大切な植物を購入する際、一番本当に有益な情報を得るためには、まずは基準を、というお話です。

 

 

 

 

 

 

 

 

私どもがこの質問を受けた際によく聞くのは、得意な植物、もしくはしっかりと生育できている植物などを聞きます。

 

全くの初心者のお客様の場合は植物を置ける環境、建物の立地、日当たりなどを確認します。

 

なので、私どもがそのあたりを探っていけば済むことではあるのですがお客様もその場で色々聞かれても普段から考えてないと上手く答えられないことが多いなと感じています。

 

例えばですが、マダガスカル植物のパキポディウムを無遮光の状況で生育しておりある程度自信がついた方であれば、ナミビアの平原に自生する植物などは同じ環境で行けると考えます。

 

そこには良質な日光と通風、そして安定した水やりが存在する、と認知できるわけです。

 

逆にそのような遮光のできない状況で、球状のユーフォルビア(例えばオベサやバリダなど)はオススメはしません。

 

育てたことのある方ならお分かりだと思いますが上記に挙げた植物は現代の過酷な夏の環境の場合高確率で球体が焼けてしまうでしょう。

 

ただ、ややこしいのは目の前に公園の木々が溢れ、それが木陰を生んで、さらに風通しがよければ焼けないこともありますので一概に言えません。

 

 

DSC_095250%のネットで遮光していても焼けてボロボロになってしまったアデニアの葉。この種はレッドリーフで葉が赤黒いので多くの熱を持ってしまったと考えています。

 

 

なので、そういった環境であるとか、得意な植物であるとか、もしくは逆に苦手な植物を意識した上でお話をしていただけるとスムーズかと思います。

 

話はすこしズレますが、私達が農家さんに伺って仕入れを行う際「これってうちの環境でいけますか?」と聞くことがあります。

 

それはその農家さんがTOKYの環境を知っているから「柔らかい光と涼しい所好きだからちょっと合わないかもね」などアドバイスをいただけたりします。

 

それはその環境や栽培練度という基準を知ってくれているので割と的確な意見になっていると考えます。

 

 

DSC_0956夏に成長が鈍化するハオルチアの多くはTOKYの環境ではちょっと苦戦します。

 

 

上記写真のハオルチアなどは本当に苦戦します。

 

ガラス温室に遮光を施し、サーキュレーターを回しても面積が少なく上手く風が循環してくれないために多くのハオルチアを星にしてしまいました。

 

現在はテラスのワイヤースタンドの下二段目に置いています。一段目にはアガベやアロエが50%の遮光ネット下にあるので鉢と鉢の間から漏れる柔らかい光で生育しています(サーキュレーターの風をお忘れなく)。

 

 

DSC_0968暑さにも寒さにも強いエケベリア・メキシカンジャイアント。

 

 

強健なエケベリアであれば真夏でも無遮光で栽培します、ただこれは少し工夫がありまして。

 

生い茂る木々のような植物の下に配置し、木陰のような状況を作りつつとても通風の良いところに置いているため今年の酷暑も元気に乗り切っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

長くなりましたが…
「この植物難しいですか?」「この植物簡単ですか?」

 

この質問をする前に一度自分の栽培練度、得意な植物、環境を把握してみてはいかがでしょうか?

 

 

 

 

あと、余談ですが、「遮光ってなんですか?」というご質問も多いのです 涙。

 

遮光とは太陽の光を100%当てずに、遮光ネットや網戸、レースのカーテン、ブラインドなどを間に介することで強光線を軽減させることを指します。

 

意外に多くて驚いたのですが、遮光=光を当てない。と考えている人がいることです。

 

「遮光しろって言われたから光の届かない明るい部屋のテーブルに置いてます」など(もちろん育成ライトなどは無い)。

 

多くの光を求める多肉植物ではよほどの練度の高い方で無いと育てるのは困難です。

 

思い込みって怖いですね。

 

 

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続続・標本株とはなんだろう

2018.01.22

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昨年末に書かせていただいた「続・標本株とはなんだろう」。

 

 

想像よりも遥かに反響をいただきました。

 

 

勿論賛否両論ですがTOKY的には全てが糧になるのでいいのですが間違った情報を拡散させたくない気持ちがあるのでいつもヒヤヒヤしています。

 

 

そんな中「続・標本株とはなんだろう」をご覧いただいたお客様よりメールをいただきました。

 

 

その内容については一見難解ですが何度か読むと「そういうことか」と腑に落ちる内容になっていますので是非皆様にも共有させていただきます。

 

 

以下ハンドルネーム「植物大好きさん」からいただいたメールに少し手を加えた編集内容になります。

 

 

 

 

 

 

–私なりの標本について

 

標本株とはなんだろう」で標本株のお話が出て、さらに「続・標本株とはなんだろう」で発展した記事となり、大変興味深く読ませていただきました。

 

以下私なりにの標本についての考えを書きましたので、よかったら読んでください。

 

 

 

 

標本株とはなんだろう」では。
・植物の完成形

・誰もが認めるような一品。

・模範や目標になる株。

・名人により作り込まれた株

 

続・標本株とはなんだろう」では。

(2つの標本の概念)

・野生種としての標本株。

・園芸上の標本株。

 

 

上記のようにありましたが、もう一つ。

 

 

学術記載のオリジナル株を指す標本株、「学術標本」の概念が存在します。

 

 

「本来はこちらが正しいのでは?」と考えています。

 

 

いわゆる、タイプ標本と呼ばれるものです (植物の場合はタイプ標本株とも呼ばれます)。

 

 

種の学名の基準となるなる単一の標本を「ホロタイプ」として新種記載の際に原記載で指定します。

 

高知大学「タイプ標本とは」を参照してください。

 

 

 

 

 

 

–本来標本とは何か?

 

 

動植物に限らず、鉱物なども含め、同定・分類するものです (いわゆる「学術標本」と呼ばれるものです)。

 

 

新しく発見されたものか、もともと存在していたものか、そうではなく新しく命名されるべきものかを判断するものです (動植物の場合は新種や変種として)。

 

 

首都大学東京 牧野標本館「標本の意義」を参照してください。

 

 

 

 

 

 

 

 

学術記載のオリジナル標本は非常に大事に扱われ、大学や政府機関に保存されています。

 

 

保存方法としては、植物では乾燥させて台紙に貼付した「さく葉標本」が国際的に採用されてきました。

 

 

さく葉標本には実物と採集データ(採取地、採集者、採取番号)が記載され、後世に伝える大事なデータとなります。

 

 

植物の場合は同定に関して重要になるのは葉や姿よりも、花の構造の方が重要視されます (現在ではDNA情報)。

 

 

 

 

 

 

–さく葉標本以外の標本

 

「さく葉標本」とは別に「生きた標本 (個体)」の存在があります。

 

 

植物学者、植物関連の大学機関、プラントハンターなどが採取し、新種として同定されたオリジナル株です。

 

 

それらの株は植物園や大学などの研究機関に保存されている場合が多く、学術標本株、またはタイプ標本株などと呼ばれています。

 

 

注意しなくてはならないのが「学術標本株=オリジナル個体」であるということです。

 

 

もしオリジナル個体が枯れた場合、代用はそのオリジナル個体から株分けされたもの以外は同じものとは呼べません (実生株であっても、実生からなる変異性があるため)

 

 

 

 

 

 

 

これは園芸品種でも同じで、作出者が交配で作った品種「一個体に命名された株」が標本株となります。

 

 

それが誤解され、同じ親同士で交配したもの全てが交配オリジナル株として認識され販売され、同じ名前なのに植物の姿がバラバラ (兄弟株)と言ったようなことが起こります。

 

 

 

 

 

–まとめ

 

私が思うに、標本株と言うものは、もともとは学術標本を指していたものが、長い間に認識の誤解により、園芸上の標本株や野生種の「標本株」=「完成株」と言う認識に誤解されていったんじゃないのかと考えています。

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか?。

 

もともとは学術として定めた標本という定義が時代、経済、人を経て変化していった様子を想像できるとても興味深い内容でした。

 

正直言えば私どものように植物を育てて鉢に植え販売しているだけ (だけではありませんが) のお店であれば学術標本の考え方が登場する機会は無いと思います。

 

ただ続、続続ともにメールを頂いたことで確実に植物に対する想いが深まりました。

 

これからも拙い知識と文章ですが記事を書きますのでご意見あればお気軽にメールをくださいませ。

 

ありがとうございました。

 

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続・標本株とはなんだろう

2017.12.12

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以前記事を書かせていただいた標本株の記事

 

 

つたない記事を読んでいただいた親切な方からご意見を頂戴しました。

 

 

とても興味深い内容でしたのでご本人さまの了承を得て抜粋・編集させていただきました。

 

 

生育に直接役立つ内容とは異なりますが園芸のロマンと不思議を垣間見てください。

 

 

かなり厚みのある文章ですので焦らずじっくりと読んでみて下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

–標本について

 

そもそも「標本」とは西洋から来た概念で、英語で「specimen」となり、以下の意味になります。

 

集団として存在する(または一定以上の物量や面積等が存在する)モノから、その集団を代表するような典型としてサンプリングされた個(個体)または一部(部位、組織等)を指す。

 

 

簡潔に書けば「良いサンプル、良い見本(good sample)」となるかと思います。
「良い」とは、良形、典型的、質の高い等の概念を含み、目的によって変わるかと思います。

 

 

また、母集団は生物には限りません(例えば、製品群でも構いません)。
ポイントは集団を代表するという概念が共通するという部分です。
後ほど触れますが、問題は標本とは何か?ではなく、標本の母集団が何か?何を代表しているのか?という事かと思います。

 

 

また、標本は自然科学等の学術分野でも良く使用されますが、こちらは死骸がメインになり、時間と共に成長することも無いので概念がある程度統一しています。
学術分野における標本とは、採集データを備え、長期保存に耐えうる形状にした典型的な生物サンプルとなります。

 

 

例えば、脊椎動物の骨格標本や剥製、魚類等の水生生物だと液浸標本、チョウ類だと展翅標本、植物だと押し葉標本等になります。
これらの学術標本は、例えば新種記載のタイプ標本となったり、分布記録の証拠として利用されます。

 

 

また、組織標本というのも存在し、例えば医学や生態・生理分野における生体組織やDNAのサンプルもこれにあたります。

学術における標本とは、出自データがしっかりしていることと、後々に繰り返し検体として使えることが原則となります。

 

 

一方、園芸界に目を向けると、学名の読みや扱い、言葉の概念、記録の方法等については、学術分野の研究者との関わりが薄く、あまり科学的または合理的でない方法をとるのが通常で、一種文化的な言葉の扱い方や口伝によって物事が伝わることが多いように感じています。

 

 

このため、言葉の概念や範囲について、曖昧な部分が多かったり、時代によって変化したり、そもそも英語等の外国語が苦手な日本人が勘違いしたまま広がった概念や読み方等が多く存在します。園芸界における学名の読み方あたりは顕著ですね。

 

 

上記の基本概念から、私が思うに園芸界には、大きく2つの標本株の概念が内在しているように感じています。

 

 

 

 

 

 

 

 

–2つの標本の概念

 

 

1.野生種としての標本株
野外集団を母集団とした場合、野外本来の姿の良形サンプルとなります。
いわゆる現地株で、その種類として一定程度の株サイズを持っていたり、小さくても親株級であれば、標本株そのものと解釈できます。

 

 

歪んだ形や傷・枝折れも、採集時のダメージでなければ、その環境での自然の状況を示しているとも言えるので(例えば、強風や干ばつ等)、そのまま温存することになろうかと思います。

 

 

特に、多肉植物や塊根植物の多くは栽培下で変に徒長したり、過剰に作り込まれることも多いので、野生種としての標本株とは、人の手をなるたけ加えない形の野外でありのままの姿と定義できます。ここは上記で書いた自然科学的な標本と一致します。

 

 

 

 

2.園芸上の標本株
園芸栽培株を母集団にした場合、標本の意味合いが変化します。
というのも、サンプリングする母集団が、人が育てる園芸株群になるからです。

 

 

そうなると、一定以上作り込まれ、皆さんが欲しくなるような、これは凄いと感じる派手な株になるかと思います。
ここには園芸上好まれる、硬作り、太短い、傷が少ない、枝付き花付きがよい等の人間側の好みが過分に入ってくるかと思います。

 

 

まさに、ここは目指すべき株姿という価値観の入った概念になるかと思います。
一方で、園芸のトレンドは時代によって変化しますので、多少は範囲が変わっていくものかと思います。
当然ながら、実生株も現地株も含まれ、一定以上の時間、人間の手が加わることになります。

 

 

なお、上記の1と2については、栽培場所が室内や庭がせいぜいなので、ある程度の株サイズに限定される話かと思います。流石に、マダガスカルのAdansoniaやソコトラのDracenaあたりの標本株は、国内での再現は困難かと思います。

 

 

 

sp_03Adansonia digitata Source of photo Plant Propagation Methods

 

 

sp_02Dracaena cinnabariSource of photo Palm talk

 

 

思うに、上記の二つはプロセスが違いますが、一部は同じ結果が含まれるように感じ、重なるのは現地株の部分かと思います。
ロジカルに前者1で切ってしまう方が解りやすいなとは感じますが、植物を作る人の思い入れも相当なものでしょうし、あまり無下にも出来ないかと思います。

 

 

また、植物の株は成長して大きくなっていきますので、1だけで切ると、そのうち全ての株は標本株でなくなってしまうのか?という矛盾にも辿り着きますので、どうしても2の要素が入ってくるように感じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

–事例

 

 

ここで問題のある事例を挙げて、上記の解釈が、どのように当てはまるか見てみましょう。

 

 

sp_04Euphorbia decepta Source of photo Au Cactus Francophone

 

Euphorbia decepta
最近人気ですが、現地での大株は柱状となります。一方で現地株は殆ど入ってこず、流通品は実生株ばかりかと思います。また、皆さんは、丸く小さく作り込むことを好みます。

 

このため、1については柱状現地株、2については太短い大株かと思います。
(画像は現地株ですがまだ若い株のようで柱状にはなっておりません。)

 

 

 

sp_05Euphorbia multiramosa Source of photo Frickr

 

Euphorbia multiramosa
昔から難物Euphorbiaの代表格として有名ですが、活着株は変に潅水しすぎると、頭から腕を何本も出し、扱いを間違えると型崩れが激しい種類でもあります。
こちらは現地株の荒々しい日焼けしたオンボロな姿そのものを完成品として標本株とする1の方が良いように感じられ、とにかく型崩れしないように維持するのが目標になるかと思います。
sp_06Commiphora kua Source of photo Palkowitschia

 

Commiphora類
現地株の多くは枝を四方八方に伸ばしていますが、多くは枝が大胆にカットされて入ってきます。

 

C.kuaC.simplicifolia等の大型Commiphora類は、枝切りにより相対的に幹が太く見えることで塊根植物として扱われている種類が多いようにも感じます。

 

また、ソマリア産のC.myrrhaやC.guidottii、C.sp.Eyl等のように、そもそもがコンパクトなために枝切りされずに入ってくる種もあります。

 

また、Commiphora類は栽培下で徒長しやすく、型崩れしやすい代表格ともいえ、剪定や針金矯正等が必要になる場面も多くなります。

 

このため、枝切りされていない種類に関しては、そのまま1にもなり得ますが、輸入された段階で資格を失っている株も多いかと思います。

 

ある意味、樹木ですので盆栽的な作り込みの先に2が存在する可能性がありますが、ここは曖昧なように感じます。

 

 

 

Fouquieria columnaris Source of photo Animal & Plants

 

Fouquieria類
現地株は大型で、親株クラスは数メートルも高さのあるモールのような細長い形ですが、栽培下だとデップリ滴形が好まれます。

 

そんなモールのような大株は誰も育てないかと思います。

 

滴形は1の概念だと、まだまだ子株ですので当たらず、立派な栽培株は2に当たるかと思います。

 

 

 

sp_07Dorstenia gigas Source of photo Panoramio

 

Dorstenia gigas
ソコトラのボトルツリーの1つ。現地では銀灰色の見事なボトル状の株姿ですが、栽培下では黄色~黄緑色のヒョロ長い滴型です。

 

そもそも全島採集禁止のソコトラからは現地株が入ってくる事はなく、また未だに現地の株姿に持っていけた趣味家は皆無かと思います(少なくとも私は知りません)。

 

この場合、1における標本株は皆無、2については徒長しようが大株が標本株になるかと思います。

 

個人的には、いくら大きくとも実生の栽培株だと流石に標本株ではないように感じてしまいますが、ありもので考えるしかないでしょう。

 

ただし、ソコトラのようなボトル形に持って行く栽培技術が確立すれば、そこが標本株に変化していくように感じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

この手の話は、古くから携わられている方々だと「~道」のような話になりがちなので、あんまり詰めて考えてもそこまで良いことがあるようにも感じられません。

 

 

また何十年か時間も経てば、価値観自体が変化しますし、その範囲も変わってくるような気もしますし、時代と共に変化する一種の文化として捉えた方が気楽なような気もします。

 

 

このため、上記の1と2を含んだ、ある一定程度のサイズを持つ良形見本が「標本株」(種によってサイズは異なる)というのが、無難で問題ないように感じます。

 

 

この中には現地株の維持も含まれるかと思います。なので現地株を排除する考えは必要はないように感じます。

 

 

–最後に

 

 

上記の話は、国内や国外において、標本株またはspecimenと示された植物を見ながら感じていた事です。
特に言葉を厳格に定義する必要性はないかもしれませんが、会話をする際に、または文書やメール等をやり取りする際に、同じ言葉に対して違う意味や範囲を示していると、ややこしいと思います。
そこは、これまでの経緯とロジカルな整理によって、考え直すのが良いかと感じています。

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか?。

 

標本について考えを巡らせたことが無いと、このレベルの情報を読んでもなかなか理解整理できないと思います。

 

本文でも述べられている日本国内では口伝などで伝わっている情報も多くありますのでロジカルにまとめていただいてとても助かりました。

 

おそらくこの標本という世界については「これが標本だ!!」と言い切れない、もしくは言いにくいということも多分に含まれていると思います。

 

そんな中でまだ若輩者の我々にこの様なメールをいただいたことに深く感謝しています。

 

その他にも植物の和名についてなども多くの情報を共有いただきました。

 

それはまたの機会にでも記事にできればと思っています。

 

 

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