標本株
よく見聞きしますが「そもそも何をもって標本株と言うんだろう」。
輸入された巨大な山採りの株をそのまま鉢に植えたものをそう呼ぶ場合もあるでしょうし園芸店で安価に売られている多肉植物でも標本株と呼ばれれるものを見ることがあります。
植物の先輩たちに「標本株とはなんですか?」と質問をすると皆さまおおよそ同様の内容の返答でした。
・誰もが認めるような一品。
・模範や目標になる株。
・名人による作り込まれた株。
上記のような返答が多くを占めました。
そしてそれらを前提とし更に“枝や棘など折れが無く傷なども無い美しい個体のことを指す”という要素が付け加わるということも指摘されました。
上手な輸入業者さんであればサボテンや枝ものの植物を折ることなく輸入できるかもしれませんが経験上そのケースの方が稀です。
要は山採りされて来た植物をそのまま鉢に挿すのみでは「標本株」には該当しない認識が正しいと思っています。
輸入球であろうが実生であろうがなんであろうが…
意志を持った人の手により育て作り上げられたもの。
私たちはそのように解釈しました。
「そんなこと当たり前じゃボケ!」と言う方もおられると思いますがこの植物の世界は標本株以外にも定義が曖昧だったり人それぞれ解釈が違う事案が多いのでつたない知見ではありますがそういうことを紐解いていければと思いました。
ちょっと文章だけだと味気ないので写真を見てみましょう。
古い輸入球のアズテキウム・ヒントニー(Aztekium hintonii)写真提供:あかだま土さん
上記は輸入された当初のものですがこれを長年生育し作り込んだ株が下記の画像です。
群生した株が増えてこんもりと群生し更に美しい形状へと変化しています。
更に見てみましょう。
こちらも古い輸入球のアズテキウム・リッテリ 花籠(Aztekium ritteri)写真提供:あかだま土さん
上記も輸入された当初のものですがこれを長年生育し作り込んだ株が下記です。
これまた粒感が揃い輸入当初よりも断然に美しく変化を遂げています。
写真提供していただいた 園芸家のあかだま土さん(ニックネーム)がその昔に標本を目指して作り込まれた株だそうです。
私たちに関して言えば稀に標本株クラスとも言える株を仕入れさせてもらえる機会もあります。
今はそれらの株姿を維持することに注力していますがいつかは標本株を自分自身で作り上げることを目標にしています。
ちなみにTOKYで管理している植物の中で「これは標本株と呼んで差し支えないかな」とある程度自信を持っている植物のひとつがこちらです。
作り込まれたフィカス・ペティオラリス(Ficus petiolaris)
画像を検索してもらえば分かりますがこのような株姿のものはほぼ皆無です。
この株は熟練の技術を持つ生産者さんが明確なビジョンを持って作ったからこのような株姿になっています。
希少、普及種、それらを超えて人間の意志と思いを長年かけて植物に宿らせることが標本株を作る重要なファクターなんだと感じています。
TOKYはまだ若輩者ですので「違うよ」などのご意見あれば是非お教え下さい。
このBlogではお客様と共に歩んでいける記事を書きたいのでこれからも考察を続けていければと思います。