ここ数年の園芸ブームはとても勢いがあると日々実感しています。
私たちはとても嬉しい反面、辛い思いをする人もいるようです。
「あの植物が買えない」「あの鉢が買えない」
私たちはそんな時こう言います「焦らなくてもいつか手に入りますよ」。
焦るな、という言葉はこの商売を初めてから、ありとあらゆる先輩たちに言われました。
それは植物の生育然り、植物の買い方しかり、今の時代であれば植木鉢もその考えに該当するんだと思います。
「焦らなくてもいつか手に入りますよ」には実は括弧書きで付け加えたいのが。
「焦らなくてもいつか手に入りますよ(良いものは)」です。
確かに、自生地から消滅してしまった現地球や、作家さんの作るシーズン毎に変わる作風のものはその時にしか手に入らないものがあるのは事実です。
ただ、そういったモノを手に入れようとすると相当な苦労を強いられるようです。
販売会では走って入店し、奪い合うかのように殺気立って買う人の話を耳にします。
そこでは精神的にタフか、そもそもそういう事が好きな人でないと長くは続きません。
実店舗に立っていると疲れ果てて「聞いてよ」と言ってくる方もチラホラ ^^;。
争奪戦になった場合に、これは私たちの持論ですが…
「承認欲求の強い富裕なコレクターには敵わない」です。
だからあまり欲しがらず、そして焦らないほうが絶対に楽しいですよ、と提案します。
TOKYでも一部希少性の高い植物や人気の植木鉢を販売したりもしますが冷静に管理場を見渡して目に入るものには特徴があります。
それは、植木鉢と植物体のサイズ感が美しくまとまっているものです。
そういう植物は決まって良い顔つきで活き活きとして見えるものです、プラ鉢だろうが素焼き鉢だろうが関係ないのです。
希少な植物や植木鉢を所有することが園芸を楽しくすることではなく、しっかりと健康に生育することを踏まえたサイジングの鉢に植物を植えて楽しむ。
これこそは園芸の醍醐味の大きな要素だと思っています。
植物を好きな植木鉢に植えて楽しむのは、様々なご意見もあるでしょうがファッションの感覚と極近しいと考えます。
全身ハイブランドに身を包んでいてもどこか洒落ていない人を見たことがありませんか?
体型にあっているサイズ感のファストファッションブランドと古着をうまく活用しているオシャレな人を見たことはないでしょうか?
余裕のあるコレクターの方は己の道を突き進めば良いのだと思いますし、そうでない方には違う楽しみ方も沢山あると思っています。
どうか、「あれがどうしても買えない、疲れました」などと疲弊して園芸に幻滅せずに少しだけ価値観の角度を変えればもっともっと沢山の楽しみ方に溢れているのが園芸だと思います。
最後に…
「あの人はアレを持っている、あの人はこんな手を使ってアレを買う」などの声。
尊敬する先輩が言っておりました。
「他人と自分を比べることから不幸が始まる」。
自慢が横行するSNSの功罪でしょうか、常に誰かと自分を比べがちです。
先日インタビューをさせて頂いた河野さんが仰っていました。
「所詮は自分と植物だけの話で、それを人生が尽きるまでしっかりと楽しむだけ」。
もっと、焦らず、目の前の植物とじっくりとコミュニケーションをとれば今よりも楽しいことが沢山溢れているのではないでしょうか?