昨年末に書かせていただいた「続・標本株とはなんだろう」。
想像よりも遥かに反響をいただきました。
勿論賛否両論ですがTOKY的には全てが糧になるのでいいのですが間違った情報を拡散させたくない気持ちがあるのでいつもヒヤヒヤしています。
そんな中「続・標本株とはなんだろう」をご覧いただいたお客様よりメールをいただきました。
その内容については一見難解ですが何度か読むと「そういうことか」と腑に落ちる内容になっていますので是非皆様にも共有させていただきます。
以下ハンドルネーム「植物大好きさん」からいただいたメールに少し手を加えた編集内容になります。
–私なりの標本について
「標本株とはなんだろう」で標本株のお話が出て、さらに「続・標本株とはなんだろう」で発展した記事となり、大変興味深く読ませていただきました。
以下私なりにの標本についての考えを書きましたので、よかったら読んでください。
「標本株とはなんだろう」では。
・植物の完成形
・誰もが認めるような一品。
・模範や目標になる株。
・名人により作り込まれた株
「続・標本株とはなんだろう」では。
(2つの標本の概念)
・野生種としての標本株。
・園芸上の標本株。
上記のようにありましたが、もう一つ。
学術記載のオリジナル株を指す標本株、「学術標本」の概念が存在します。
「本来はこちらが正しいのでは?」と考えています。
いわゆる、タイプ標本と呼ばれるものです (植物の場合はタイプ標本株とも呼ばれます)。
種の学名の基準となるなる単一の標本を「ホロタイプ」として新種記載の際に原記載で指定します。
高知大学「タイプ標本とは」を参照してください。
–本来標本とは何か?
動植物に限らず、鉱物なども含め、同定・分類するものです (いわゆる「学術標本」と呼ばれるものです)。
新しく発見されたものか、もともと存在していたものか、そうではなく新しく命名されるべきものかを判断するものです (動植物の場合は新種や変種として)。
首都大学東京 牧野標本館「標本の意義」を参照してください。
学術記載のオリジナル標本は非常に大事に扱われ、大学や政府機関に保存されています。
保存方法としては、植物では乾燥させて台紙に貼付した「さく葉標本」が国際的に採用されてきました。
さく葉標本には実物と採集データ(採取地、採集者、採取番号)が記載され、後世に伝える大事なデータとなります。
植物の場合は同定に関して重要になるのは葉や姿よりも、花の構造の方が重要視されます (現在ではDNA情報)。
–さく葉標本以外の標本
「さく葉標本」とは別に「生きた標本 (個体)」の存在があります。
植物学者、植物関連の大学機関、プラントハンターなどが採取し、新種として同定されたオリジナル株です。
それらの株は植物園や大学などの研究機関に保存されている場合が多く、学術標本株、またはタイプ標本株などと呼ばれています。
注意しなくてはならないのが「学術標本株=オリジナル個体」であるということです。
もしオリジナル個体が枯れた場合、代用はそのオリジナル個体から株分けされたもの以外は同じものとは呼べません (実生株であっても、実生からなる変異性があるため)
これは園芸品種でも同じで、作出者が交配で作った品種「一個体に命名された株」が標本株となります。
それが誤解され、同じ親同士で交配したもの全てが交配オリジナル株として認識され販売され、同じ名前なのに植物の姿がバラバラ (兄弟株)と言ったようなことが起こります。
–まとめ
私が思うに、標本株と言うものは、もともとは学術標本を指していたものが、長い間に認識の誤解により、園芸上の標本株や野生種の「標本株」=「完成株」と言う認識に誤解されていったんじゃないのかと考えています。
いかがでしたでしょうか?。
もともとは学術として定めた標本という定義が時代、経済、人を経て変化していった様子を想像できるとても興味深い内容でした。
正直言えば私どものように植物を育てて鉢に植え販売しているだけ (だけではありませんが) のお店であれば学術標本の考え方が登場する機会は無いと思います。
ただ続、続続ともにメールを頂いたことで確実に植物に対する想いが深まりました。
これからも拙い知識と文章ですが記事を書きますのでご意見あればお気軽にメールをくださいませ。
ありがとうございました。