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TOKY Staff Blog
ショップからのお知らせや日々の新たな発見などの情報を発信します

雑記

価値の変換

2018.07.09

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製作中のmiamauaによるPseudobombax ellipticum(プセウドボンバックス・エリプティクム)の麻ひもぐるみ

 

 

私たちは製作者であるアーティストtenさんの作るもの全てが好きで、新作を見るたびに心躍っているEverydayです。

 

 

今回プロトタイプで見せてくれたボンバックスは今までに無い価値の変換を感じました。

 

 

ボンバックスは基本はまん丸いフォルムのものが特に好まれるのが主流です。

 

 

自然に丸くなる個体も稀にあるようですが基本は人の手による剪定されたものが多くを占めます。

 

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実物を目にした時に少し時が止まりました。

 

 

「あれ、この切り株みたいの、剪定跡?」

 

 

tenさん自身は植物の栽培にそれほど興味が無いそうなのでこの剪定跡の発想は極自然に生まれたそうです。

 

 

普段我々がボンバックスのチャームポイントである丸さにフォーカスするようにtenさんの目には切り株のような剪定跡がチャーミングに見えたに違いありません。

 

 

園芸の世界で言えば剪定後の残るものよりも年月をかけて後が消えて、丸くなったものの方が価値があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

ですがそれは広くとも狭い園芸の世界の中の一つの価値観で、視点を変えてみれば美醜の価値も変わるということをこの麻ひもぐるみは教えてくれました。

 

 

完成された丸くカッコいいものは所有欲を満たしてくれますが、生育の楽しさでは途中経過の方が楽しいと思っています。

 

 

カッコいいとかクールということよりも、面白いとか楽しい方が、人は不思議なほど共感してくれる、この業界に身を置いてとても感じます。

 

 

とりとめも無い記事になってしまいましたが変わらない価値があるように、変わって行く価値もあっていいと思いました。

 

 

お店でお客さんと話したりSNSを見ていると皆一様に「良形良形!」となっていて、「あなたの本当に好きなものはなんですか?」と問いたくなったりします。

 

 

早く丸くなれ!と言わずに、選定した切り口もじっくりと愛でるような楽しみ方を私たちもしてみようと思います。

 

 

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勿論剪定跡だけじゃなくて…。

 

 

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誰にもできない発想と、緻密な作業の積み重ねなど、見どころ沢山のボンちゃんをよろしくお願いいたします。

 

 

焦りは禁物

2018.06.24

as

 

 

ここ数年の園芸ブームはとても勢いがあると日々実感しています。

 

私たちはとても嬉しい反面、辛い思いをする人もいるようです。

 

 

「あの植物が買えない」「あの鉢が買えない」

 

 

私たちはそんな時こう言います「焦らなくてもいつか手に入りますよ」

 

焦るな、という言葉はこの商売を初めてから、ありとあらゆる先輩たちに言われました。

 

それは植物の生育然り、植物の買い方しかり、今の時代であれば植木鉢もその考えに該当するんだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

「焦らなくてもいつか手に入りますよ」には実は括弧書きで付け加えたいのが。

 

「焦らなくてもいつか手に入りますよ(良いものは)」です。

 

確かに、自生地から消滅してしまった現地球や、作家さんの作るシーズン毎に変わる作風のものはその時にしか手に入らないものがあるのは事実です。

 

ただ、そういったモノを手に入れようとすると相当な苦労を強いられるようです。

 

販売会では走って入店し、奪い合うかのように殺気立って買う人の話を耳にします。

 

そこでは精神的にタフか、そもそもそういう事が好きな人でないと長くは続きません。

 

実店舗に立っていると疲れ果てて「聞いてよ」と言ってくる方もチラホラ ^^;。

 

 

 

 

 

 

 

 

争奪戦になった場合に、これは私たちの持論ですが…

 

「承認欲求の強い富裕なコレクターには敵わない」です。

 

だからあまり欲しがらず、そして焦らないほうが絶対に楽しいですよ、と提案します。

 

TOKYでも一部希少性の高い植物や人気の植木鉢を販売したりもしますが冷静に管理場を見渡して目に入るものには特徴があります。

 

それは、植木鉢と植物体のサイズ感が美しくまとまっているものです。

 

そういう植物は決まって良い顔つきで活き活きとして見えるものです、プラ鉢だろうが素焼き鉢だろうが関係ないのです。

 

希少な植物や植木鉢を所有することが園芸を楽しくすることではなく、しっかりと健康に生育することを踏まえたサイジングの鉢に植物を植えて楽しむ。

 

これこそは園芸の醍醐味の大きな要素だと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

植物を好きな植木鉢に植えて楽しむのは、様々なご意見もあるでしょうがファッションの感覚と極近しいと考えます。

 

全身ハイブランドに身を包んでいてもどこか洒落ていない人を見たことがありませんか?

 

体型にあっているサイズ感のファストファッションブランドと古着をうまく活用しているオシャレな人を見たことはないでしょうか?

 

余裕のあるコレクターの方は己の道を突き進めば良いのだと思いますし、そうでない方には違う楽しみ方も沢山あると思っています。

 

どうか、「あれがどうしても買えない、疲れました」などと疲弊して園芸に幻滅せずに少しだけ価値観の角度を変えればもっともっと沢山の楽しみ方に溢れているのが園芸だと思います。

 

 

 

 

最後に…

 

「あの人はアレを持っている、あの人はこんな手を使ってアレを買う」などの声。

 

尊敬する先輩が言っておりました。

 

「他人と自分を比べることから不幸が始まる」。

 

自慢が横行するSNSの功罪でしょうか、常に誰かと自分を比べがちです。

 

先日インタビューをさせて頂いた河野さんが仰っていました。

 

「所詮は自分と植物だけの話で、それを人生が尽きるまでしっかりと楽しむだけ」。

 

もっと、焦らず、目の前の植物とじっくりとコミュニケーションをとれば今よりも楽しいことが沢山溢れているのではないでしょうか?

 

植木鉢=駄物?

2018.02.17

04Photograph By Thinkstock
新しく出会った陶芸家さんに鉢の制作ご依頼することが多くあります。

 

 

陶芸の世界では穴の空いた陶器は「駄物」と呼ばれることがあります。

 

 

「駄鉢(だばち)」などと呼ばれることもあり、陶器の中でも位的に底辺なのはお察しの通りです 涙 (正式には駄温室鉢らしいです)。

 

 

なのでTOKYで鉢を作ってくれている陶芸家さんはそういう考え方を特にされない方か、陶芸と園芸の盛り上がりを感じてくれている方。

 

 

もしくは「駄物?その考え方をぶち壊してやるぜ!!」と気骨溢れるある方もいらっしゃいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

昨今は植木鉢も社会的な地位を少しづつ高めているようで凝ったハンドメイドやセレクトの鉢を取り扱うお店が増えたという印象があります。

 

 

それでもまだ、陶芸家さまに問い合わせると「鉢はやりません」という方もいらっしゃいます。

 

 

それもしょうがないかな〜と思いつつ、私たちは現在の園芸と陶芸が交差するその道がとても広く深くなりつつあることを感じます。

 

 

私たちが日々繰り返していることは一足飛びに何かを成し得る、などと言う世界とはかけ離れています。

 

 

なので粛々坦々と日々の業務をこなしつつ自分たちが考える未来の為の開発や仕入れが重要と考えています。

 

 

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話は少し変わりますが作家もの、と呼ばれる作家さんの個展などでは様々な個体差を持った陶器が一同に介します。

 

 

TOKYの実店舗にお越しいただければその縮小版のような雰囲気を味わえますがネット通販だと少し話が変わります。

 

 

ネットのお写真で気に入った風合いのものがあればそれが欲しいのは心情ですし印象と違ったものが送られてこれば肩透かしを食らったような気持ちになるかもしれません。

 

 

「この鉢はツヤがあるものよりもマットなものの方が人気があるな」と思えば作家さんにそのように伝えることもあります。

 

 

ただ、陶芸とは「こうしてくれ」と伝えて簡単にそのように出来るという世界で無いことは私たちも含め知っていおいたほうが良いかと思っています。

 

 

気候、温度、釉薬の成分の微妙な異なり、土の微妙な変化、そして窯で焼成する際の位置。

 

 

そういう本当にわずかな違いで出来上がりに大きな差ができることもあります。

 

 

とある陶芸家さんに言われたことが印象に残りました。

 

 

作家物が良いと言うのに差を良しとはしないのですね。

 

 

おそらく実物が幾つも展示販売されているお店であればむしろ差を多様性と解釈されるのかもしれません。

 

 

私たちは一点ものと言う名の、同じシリーズのハンドメイドポットを沢山作ってもらいネットで販売するため少し話が異なってきます。

 

 

本来は全ての商品を克明に撮影し個別にアップできれば購入されるお客様とのギャップはもう少し埋められると思います。

 

 

ただ、数十個と納品されてくる鉢を全て撮影、画像作成、ページ作成を行っていたらお店を運営していくことは困難です。

 

 

 

 

 

 

 

 

前途した園芸と陶芸の交わりは広く深くなりつつありますがまだまだ未成熟な文化圏だと考えています。

 

 

私たちTOKYが「こう言っているからこうだ!!」と言う決めつけではなく「園芸と陶芸の間にはまだ溝があってそのギャップを皆で埋めていきませんか?」と言う提案です。

 

 

それは植木鉢を駄物と定義されている陶芸家さんに対しても同じかなと言う印象です。

 

 

販売側の私たちが全て道筋を決めてその通りに行けることは無いですし、またそうするべきでもないと思います。

 

 

 

 

余談ですが通常鉢が入荷すると検品を行った後エアマットを巻き品番をつけた後棚に格納し管理を行います。

 

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理由としてTOKYはWebストアが主ですので日本全国からの発注に対しどのスタッフでも均一に梱包出荷できるようオペレーション上そのような管理を行っています。

 

 

そういうこともあり個別の商品の個体差に対してお写真を求められるお客様にご対応が出来かねる理由とさせていただいております。

 

 

本当は面積の大きなショップで月の大半の日に営業していれば、より多くの方に好きな商品を手にとって見ていただけると思いますがそれは本当にまだまだ先になりそうです。

 

 

実生苗は電気羊の夢を見る。

2018.02.02

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実生苗は電気羊の夢を見る。

 

 

 

タイトルに深い意味はありません。

 

 

 

TOKYには東京サイズの陶器鉢がたくさんあるためか(2〜4号)小さい苗の植え替え用に鉢を買われる方が多くいらっしゃいます。

 

その中でたまに気になることを聞かれることがあるので少しTOKYの考えを書いておきます。

 

 

 

「この植物に合う鉢ってありますか?」

「この鉢に植えたのですがあまり大きくならないのですが何故ですか?」

 

 

 

そのようなご質問を受け画像で苗を見せていただくとこんな感じが多いです。

 

 

ち、小さい…。

 

 

 

 

見た感じ播種されてから1〜2年ほどの幼苗のように見受けられることが多くあります。

 

 

幼苗と言っても選抜された大きなものは鑑賞に耐えうることもありますが基本そういう株を手に入れた場合は…。

 

 

 

 

鑑賞価値が高まるような大きさ、形になるまでプラ鉢でしっかりと生育する!!

 

 

 

 

小さな頃は成株よりも弱いですし最も適した環境にしてあげて、そしてもっと言えば幼苗を観賞価値が高まるまで持っていくのはそれなりの経験を積まないと難しいと思います。

 

 

幼く健気に生きている植物は大人になるまでは鑑賞よりも観察に努めていただきしっかりと健康に大きくしてあげつつせめて3~4年目になるまでは陶器の鉢に植えて鑑賞はグッと抑えて頂いたほうがいいかなと思います。

 

02お客様に見せていただいた幼苗を仕立てたものの内部予想図。パキポディウムに限りませんが土が多めで通気性が悪い陶器鉢を選ぶと生育に支障が出ることが多いです。

 

 

ちなみに「幼苗を買うな」と言っているわけではありません「幼苗は生育する楽しさを味わうべき」というお話です。

 

 

ただ、育てたことがない植物や得意分野と違う植物に挑戦することは園芸を楽しむと言う意味で言えばとても良いことだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

余談ですが例えばとある植物の人気が高まると山取りで輸入されてくる植物のサイズは少しづつ小さくなっていくそうです。

 

 

人気があるサイズ(数年前だと5号くらい?)から消費されていくので基本取り尽くして小さいものを取り出すそうな。

 

 

逆に人気のサイズ感よりも大きなものにならないのは値段も上がるので一度定着した価格のイメージが先行して売れにくくなるそうな。いろんな意味でダウンサイジングしていくしか無いわけですね。

 

 

現在はワンハンドできるコンパクトなサイズの植物が人気なので幼苗が一般に多く流通しているのはその影響かもしれませんね(ワンハンドサイズが手に入らない為ストックの幼苗を出さざるを得ない)。

 

 

貴重なこと、生命であることに変わりは無いので、まずはファッション・インテリア感覚は置いておいてしっかりと生育していただければと思います。

続続・標本株とはなんだろう

2018.01.22

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昨年末に書かせていただいた「続・標本株とはなんだろう」。

 

 

想像よりも遥かに反響をいただきました。

 

 

勿論賛否両論ですがTOKY的には全てが糧になるのでいいのですが間違った情報を拡散させたくない気持ちがあるのでいつもヒヤヒヤしています。

 

 

そんな中「続・標本株とはなんだろう」をご覧いただいたお客様よりメールをいただきました。

 

 

その内容については一見難解ですが何度か読むと「そういうことか」と腑に落ちる内容になっていますので是非皆様にも共有させていただきます。

 

 

以下ハンドルネーム「植物大好きさん」からいただいたメールに少し手を加えた編集内容になります。

 

 

 

 

 

 

–私なりの標本について

 

標本株とはなんだろう」で標本株のお話が出て、さらに「続・標本株とはなんだろう」で発展した記事となり、大変興味深く読ませていただきました。

 

以下私なりにの標本についての考えを書きましたので、よかったら読んでください。

 

 

 

 

標本株とはなんだろう」では。
・植物の完成形

・誰もが認めるような一品。

・模範や目標になる株。

・名人により作り込まれた株

 

続・標本株とはなんだろう」では。

(2つの標本の概念)

・野生種としての標本株。

・園芸上の標本株。

 

 

上記のようにありましたが、もう一つ。

 

 

学術記載のオリジナル株を指す標本株、「学術標本」の概念が存在します。

 

 

「本来はこちらが正しいのでは?」と考えています。

 

 

いわゆる、タイプ標本と呼ばれるものです (植物の場合はタイプ標本株とも呼ばれます)。

 

 

種の学名の基準となるなる単一の標本を「ホロタイプ」として新種記載の際に原記載で指定します。

 

高知大学「タイプ標本とは」を参照してください。

 

 

 

 

 

 

–本来標本とは何か?

 

 

動植物に限らず、鉱物なども含め、同定・分類するものです (いわゆる「学術標本」と呼ばれるものです)。

 

 

新しく発見されたものか、もともと存在していたものか、そうではなく新しく命名されるべきものかを判断するものです (動植物の場合は新種や変種として)。

 

 

首都大学東京 牧野標本館「標本の意義」を参照してください。

 

 

 

 

 

 

 

 

学術記載のオリジナル標本は非常に大事に扱われ、大学や政府機関に保存されています。

 

 

保存方法としては、植物では乾燥させて台紙に貼付した「さく葉標本」が国際的に採用されてきました。

 

 

さく葉標本には実物と採集データ(採取地、採集者、採取番号)が記載され、後世に伝える大事なデータとなります。

 

 

植物の場合は同定に関して重要になるのは葉や姿よりも、花の構造の方が重要視されます (現在ではDNA情報)。

 

 

 

 

 

 

–さく葉標本以外の標本

 

「さく葉標本」とは別に「生きた標本 (個体)」の存在があります。

 

 

植物学者、植物関連の大学機関、プラントハンターなどが採取し、新種として同定されたオリジナル株です。

 

 

それらの株は植物園や大学などの研究機関に保存されている場合が多く、学術標本株、またはタイプ標本株などと呼ばれています。

 

 

注意しなくてはならないのが「学術標本株=オリジナル個体」であるということです。

 

 

もしオリジナル個体が枯れた場合、代用はそのオリジナル個体から株分けされたもの以外は同じものとは呼べません (実生株であっても、実生からなる変異性があるため)

 

 

 

 

 

 

 

これは園芸品種でも同じで、作出者が交配で作った品種「一個体に命名された株」が標本株となります。

 

 

それが誤解され、同じ親同士で交配したもの全てが交配オリジナル株として認識され販売され、同じ名前なのに植物の姿がバラバラ (兄弟株)と言ったようなことが起こります。

 

 

 

 

 

–まとめ

 

私が思うに、標本株と言うものは、もともとは学術標本を指していたものが、長い間に認識の誤解により、園芸上の標本株や野生種の「標本株」=「完成株」と言う認識に誤解されていったんじゃないのかと考えています。

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか?。

 

もともとは学術として定めた標本という定義が時代、経済、人を経て変化していった様子を想像できるとても興味深い内容でした。

 

正直言えば私どものように植物を育てて鉢に植え販売しているだけ (だけではありませんが) のお店であれば学術標本の考え方が登場する機会は無いと思います。

 

ただ続、続続ともにメールを頂いたことで確実に植物に対する想いが深まりました。

 

これからも拙い知識と文章ですが記事を書きますのでご意見あればお気軽にメールをくださいませ。

 

ありがとうございました。

 

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